最近内田さんのブログを全然読んでいなかったので、なんだか新鮮に読めた。

下流志向──学ばない子どもたち、働かない若者たち

下流志向──学ばない子どもたち、働かない若者たち

どんな場合でも、「おまえのせいで私はいま不愉快になっている」という態度をまず採ってみせることが有利に働くということがわかってきたので、日本人の全体がだんだんそういうマナーを採用するようになったということだろうと思います。

社会には、「私に迷惑をかけるな」というメッセージを、恥ずかしげもなく、というかむしろ自信をもって、発するひとが、いがいに多い。「自分がそういう態度をとっても損をしない」相手にたいしては特にね。
たとえば、自分の投げかけた質問に対して、自分の意図とは違う答えが返ってきたときに、「だからそうじゃなくて」みたいな返答をするひとはけっこういるが、そもそも、自分の意図通りに相手が動かないと不愉快になるという構図は、自己中心的だが、不愉快になることで、優位にたつ。その優位性が理不尽であれ、ふいに怒られると、しゅんとなっちゃうし。
感情の揺れを共有する(させる)のって、近しい関係でないと迷惑かな、…という感覚から、私はかなりきつい状態でも、近しくない誰かとそれを共有したいとは思わない(させる権利が自分にあるとは思えない)。だから、たぶん永遠に遠いままの関係のひとから「私に迷惑をかけるな」という、不愉快の表明のためのメッセージを受け取ると、少し面喰らうのだが、そういう面喰らいもまた、「私に迷惑をかけるな」という思いのあらわれなんだろうなあ。
「迷惑をかけるな」というメッセージを迷惑がらないことから、「迷惑をかけ合う」共同体のよさが立ち上がってくるんでしょうか。