におう。

コーヒーのにおいをかいでいて、食べ物のにおいをかいでいて、ふっと、人間がにおわないわけないのに、わたしたちはなぜここまでにおいを気にするのだろう、と思った。生きているのに、コーヒーなんかより、ずっとみずから動いているのに、汗をかいているのに、なぜこんなにも。
この疑問は、あんがい私、好きなひとの体臭って好きだなあ、と思ったことに起因している。べつに鼻をうんと近づける機会にめぐまれたわけではないが。昔ちょっとだけ縁があったひとは、なんだか全然、そのひとの香りのしないひとだった。無臭って感じで、石鹸のにおいがした。そういうところが苦手だったんだとも思う。