シンクはザルなんです。

誰かの残した一言が、日常の生活の中にふと蘇り、ふと考え、忘れ、ふと蘇る。そんな言葉があると思う。
子供のころは、水道局に見学に行ったときに同級生のA君がのこした言葉だった。「夜になると水道水が濁るのはなんでですか?」という一言。夜に蛇口をひねるたびに思い出す言葉だった。
折に触れそういう言葉ってあるものだ。
で、先日、松居一代が、あの、そうじ好きの彼女が、写真とともに、
「うちでは毎日何回シンクを洗ってるか分からないくらいピカピカ。だからシンクで野菜の水を切ってるんです」
と説明していたことが頭からはなれない。写真にはシンクにトマトがのっかっている(水切り)されているようすが映っていた。いくらなんでもシンクで水切りはないんじゃないの? と思われた。つまりシンクって下水と接しませんか? とか、ありきたりの言葉を帳消しにする彼女の笑顔、「ピカピカだからザルといっしょなんです」というまじめな自信、に私は、傷ついたと言ってもいいと思う。
そんなわけでここ数日シンクを見つめては、シンクのないところでシンクを思っては、すこし悲しい気持ちになっています。これが過去に5、6年私を苦しめた水道水発言と同じくらい長いスパンで私にのこったらどうしてくれる。松居さんとは芸能人と視聴者、見られる側と見る側、という関係を崩したくない。私の心に入ってきてほしくないのです。