あ〜ん。

今日友達に話してて思い出したんだけど、流れ上、大学でサークルに入ってしまったことがあり、すぐやめたのだけど、そのやめた理由はまあ、「遠い」ということもあったのだが、「あ〜ん」もあった。
あ〜ん
とだけ書くと、なにか隠微な響きもするが、これはあの、恋人同士や熱々の夫婦などがよくやる、また母が小さな子などによくやる、スプーンなどに食物をのせ、相手の口に運ぶというときの、かけ声である。
結果的になにかのサークルに所属していた同士が恋仲になったりするなどは、もしかすると大学を卒業してからすら、よくあることだが、大学時代の恋仲というのは、まあ同じサークルにいて、なんだか気があって、いい雰囲気になって、なんか性格も好きみたい・・みたいのが多いと思うんだけど、だからこそ、サークルという場では、性的な役割が異様に顕著である。あなたが男なら、男というペルソナに、私なら女というペルソナに、自分を合わせていかねばならない。体育会系のサークルで、男女別に運動していても、飲み会になるとこれ、ペルソナを演じ始める。
で、まあ、私がサークルに入っていたときに何があったかというと、舞台は飲み会。
△○●△

△△△△
という配列。机には飲み会的飲食物。私が●、ある男の先輩が○だとすると、周りの△たちが、

「●ちゃん!○先輩にあ〜んしてあげて!!!」

的な合唱をし始めたのである。
「あ〜んしたげて!」「あ〜ん!」
おわかりだろうか? この「あ〜ん」をする側としての女のペルソナ、「あ〜ん」をされる側としての男のペルソナ。私はこのペルソナに即座に、苦しむことになった。
この「あ〜ん」を催促する空気が周りの△たちによって出来てしまった今、私が「あ〜ん」をする空気が正しいのであって、「あ〜ん」を拒むとすると、私は空気を読まない子になってしまう。自分の評価問題云々より、「あ〜ん」をしなかったことで、別に好きでも嫌いでもない先輩(今となっては学歴しか覚えていない)に、「空気を読まないという暴挙をおかしてもなお俺に「あ〜ん」をすることはいやなのだろうか」と思わせてしまう可能性がある。私はそんな小さなことで人を傷つけるのは好きではない。多分、男だったら、風俗で超不細工がデリバリーで来ても辛抱して続けるほうだと思う。もちろんこういう空気を△たちがつくりだしたことについては、マジョリティによる徹底的に無自覚な暴力を感じざるをえないけれども、もうここは「あ〜ん」をするしかない。
と腹をくくって「あ〜ん」をしたのだけど、こういうことが嫌で、サークルを一ヶ月でやめちゃった。