正面から書く(紙に)の宣言

私はノートをとるのが苦手で、学生時代もノートまとめなるものがとても嫌いだった。ちょっとしたメモしたいことをメモするのも苦手で、立って書いた字は字の体裁を成さず、座っていたってペンとの相性でぐちゃぐちゃになり、書いた後で違ういい表現を思いついたり、で、頭がきっきっきーってなって、自尊心を大いに傷つけた。学生時代はなにか誰かがいい感じにまとめたものに好きに書き加えるという方策をとっていた他力本願型に終始し、なのに新卒でついた仕事は情報をまとめて紙面をつくるような仕事で、情報がまとめられなくって、結局なれなかった新聞記者という仕事については(いまでもうらやましい!)、メモもとれないのによく少しでもなりたいと思ったものだとあきれる。結局、ノートはとらない、メモもとらない、としていたら、仕事に差しさわりがあったりして、かといってEVERNOTEみたいなものもこまめにまとめることができず、トライ&エラー&エラー&と続く。結局ノート難民であったがために、意を決してこの雑誌を買った。私の字は別にブサイクではないのだけど、うまく書けなくてイライラして、コンピュータで仕事ができるときはいいのだけど、来年からは紙に書くことも多いと聞いていて、スケジュール帳も書いた字が気にくわなくて途中で捨てるような病的な私は(でも病名はつかないだろうから病気じゃないんだけど)、本当に書くということに向き合わないといけないんです。この本は、書くことを楽しんでいる人たちが出てきて、すごくいい。インクの色とかも、黒だけどよく見ると青、という色を自分で調合している人がいて、万年筆も何本も使わないままペン立てにおいたままインクもかすかすになっている私は、いたく反省して、自分の好きな色や、ずっと私の人生によりそってくれるペンや紙を見つけたいと思った。今度東京に行ったらインクのお店に行きたいと思う。とりあえず紙はじめとしては、モレスキンの小さなノートを買ってみた。仕事中にメモしてみたい。まだ届いていないけれど、過去にはヘミングウェイも愛用していたということだから、そのきらめきで続けていけたら。この雑誌に出てくるような、自分の思いや経験をノートに載せることができる人たちを、その丁寧さを、まぶしく思う。最後にはかわいい文字特訓のコーナーがあって、たとえば漫画家の海野つなみさんが単行本のあとがきで見せる文字と似ているのだけど、あとがきを見るたびにきゅーんとなる。中高時代の断絶している同級生もこういうかわいい字を書いていて、いまでもあこがれているのである。