よしもとよしとも/榎本ナリコ/吉田秋生

ところでよしもとよしともの「アヒルの子のブルース」で「約束を果たせなかった」という無念な、あるいは切ない思いが、主人公の肉体から離れて空に浮かぶ。前に話した榎本ナリコ吉田秋生に共通するのは、何か思い(あるいは「重い」)があると「地面から逃れられない」っていう感じ。よしもとよしともにとっては「浮かぶ」ものが榎本や吉田にとっては「縛り付けられる」ものなわけだ。榎本も吉田も女として書くとき、男として書くときがあるから、これを性差だと言ってしまうのは乱暴だ。それでも、このよしもとの「浮かぶ」感じは、男特有の自由さだと・・私は多分憧れている。普段生活をしていく上では上下関係や社会との関わりで男の方が不自由だろうけど、突き抜けてしまえば真に自由になれるのも男なのかなあと。。。。*1

*1:と思っていたら、吉田秋生の「夢みる頃を過ぎても」では、天使の羽はなくしたけれども恋人の腕に抱かれて「なんてあたたかな感触でしょう ほんとうになにも心配することなかったんです」と羽に別れを告げるシーンがある。羽という自由はなくなったが、それは悲しむべきことではなかったのだ。