肉戦争。これは私の私による私のための闘いだ。

前に住んでいた家の近くに、二軒肉屋があり、どちらにもよく行っていた。家により近いほうを肉屋A、遠いほうを肉屋Bとすると、肉屋Aの豚小間は小さめで、肉屋Bの豚小間は大きめだった。どちらも、それぞれのよさがあったと思う。でも、どちらかというと、肉屋Bのほうに行きたかった。それはなにも肉屋Bが激旨揚げたてコロッケを売っているからではなく、両肉屋の金への執着の違いだ。肉屋Aはケチで肉屋Bは太っ腹だった。100g100円の小間肉を100g欲しいと伝えたとして、肉屋Aと肉屋Bが直感で取り分けた小間がともに115gだったとする。すると、肉屋Aは「多くなっちゃったけどいいかな?」と115円請求するのに対し、肉屋Bは「おまけね!」と言ってこちらの支払いを100円にしてくれる。いつもそうだった。これは本当に小さな額だが、こういうことの積み重ねが商売を左右するんじゃないかと思う。塵も積もれば山となるので、肉屋Aが少しずつ多めに盛って多めに売ろうとしたら、利益も少し積み重なるだろう。が、心象が少しわるくなる。いっぽう、肉屋Bはどうだろう。たった15円おまけしてくれただけでも、ひどく気分が高揚し、また足が向かう。(そういえば区のお買い物カードを忘れたときなども、肉屋Aは「忘れたぶんは押せない」という態度で、この態度は肉屋のみならず区のたいていの商店でそうだったが(というのは、店がポイントを買い取る方式のため、お店としてはできるだけそんなお金は使いたくないのだ。使いたくないから、カード協賛店であることを隠している店すらある)、肉屋Bはレシートにマジックでしるしを書いてくれ、「今度来たときに押すよ」という態度だった。)
引っ越してからはスーパーで肉を買うことが多いのだが、それでもたまに肉屋に行く。今日なんて、200円のものを買おうとして、例の文句で、240円になった。20%増しである。直近のおそうざい屋さんも、例の文句で、いつも少し多めに盛られ、多く徴収される。というわけで、私はこの、本来責めるほどでもないからこそ確信犯的な金銭的踏みつけ行為にたいして抵抗勢力となることをここに宣言し、今後、「それならむしろ少なくして下さいな。」と言い放ちたいと思う。